骨格筋の筋痙攣に対するマグネシウム(コクランレビュー・2020年更新版)
Magnesium for skeletal muscle cramps
Summary
要約
2012年版を2020年に更新したコクランレビュー。11件のRCT(並行9件・クロスオーバー2件)計735人を統合し、特発性の筋痙攣ではマグネシウムとプラセボに差が示されなかった。妊娠関連の下肢痙攣は文献が矛盾する。運動に伴う筋痙攣を評価したRCTは見つかっていない。疾患に伴う筋痙攣も、肝硬変の小規模1件を除いて見つかっていない。軽微な有害事象はマグネシウム群で多い。
Study Attributes
研究属性
| 研究タイプ | メタアナリシス |
|---|---|
| サンプルサイズ | 735名 |
| 期間 | 試験ごとに異なる(主要評価は4週時点) |
| 対象集団 | 骨格筋の痙攣がある成人(特発性・妊娠関連)。ほか、痙攣のある人を一部含む肝硬変患者29人の試験1件 |
| 発表年 | 2020 |
| DOI | 10.1002/14651858.CD009402.pub3 |
| リンク | https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32956536/ |
Key Findings
主要知見
- 特発性の筋痙攣で、4週時点の週あたり痙攣回数の変化率に差なし(平均差 −9.59%、95%CI −23.14〜3.97。3試験177人、中程度の確実性)。痙攣の頻度に関する指標は試験間の異質性も小さい(I² = 0〜12%)
- 4週時点の週あたり痙攣回数の差も −0.18回(95%CI −0.84〜0.49。5試験307人、中程度の確実性)
- ベースラインから25%以上減った人の割合も差なし(RR 1.04、95%CI 0.84〜1.29。3試験177人、高い確実性)
- 4週時点で痙攣を中等度以上と評価した人の割合も差なし(RR 1.33、95%CI 0.81〜2.21。2試験91人、中程度の確実性)
- 4週時点で痙攣の大半が1分以上続いた人の割合も差なし(RR 1.83、95%CI 0.74〜4.53。1試験46人、低い確実性)
- 重大な有害事象と、有害事象による脱落はプラセボと差がない(マグネシウム72人中2人、プラセボ68人中3人)
- 一方、軽微な有害事象はマグネシウム群で多い(RR 1.51、95%CI 0.98〜2.33。4試験254人、低い確実性)。主に下痢などの消化器症状で、経験した人は11%(対照10%)から37%(対照14%)
- 運動に伴う筋痙攣を評価したRCTは1件も見つかっていない
- 疾患に伴う筋痙攣(筋萎縮性側索硬化症など)を評価したRCTも、肝硬変の29人を対象にした小規模1件を除いて見つかっていない。この29人のうち痙攣を有していたのは一部だった
Limitations
研究の限界
- 妊娠関連の5試験と肝硬変の1試験は、いずれもバイアスリスクが高いと判定されている。特発性の5試験で高いと判定されたのは1試験のみ
- 妊娠関連の下肢痙攣は5試験408人あるが、メタ分析ができなかった。プラセボと比較した3試験のうち、1試験は頻度・強度とも効果なし、1試験は両方に効果あり、1試験は頻度について整合しない結果を報告している。無治療と比較した1試験は、治療効果全体の3段階評価で有意な差を見いだしていない
- 11試験のうち1試験は経口補給ではなく、緩徐な静脈内投与を行っている
- 肝硬変の1件は小規模で痙攣の報告も限られ、結論を出せていない
- 検索は2019年9月9日まで。それ以降の試験は含まれない
- 有害事象の解析は、痙攣が起きた場面を問わず全試験をまとめたもの
研究の位置付け
マグネシウムと筋痙攣の関係を扱ったコクランレビューです。2012年に初版が出て、2020年に新しい試験を組み入れて更新されました。ここで扱うのは更新版(pub3)で、7試験406人だった初版から11試験735人に増えています。
「マグネシウム不足がこむら返りの原因」という広く信じられている見方に対して、高齢者の特発性筋痙攣ではプラセボと差がないという結論を出した点が重要です。
更新で変わった点のひとつが安全性の記述です。初版は「軽微な有害事象を経験した人数は判定できなかった」と断ったうえで、各試験が副作用をおおむねプラセボと同程度と記述している、と伝えていました。更新版は判定できた4試験254人で定量し、軽微な有害事象がマグネシウム群に多いと報告しています(RR 1.51、95%信頼区間 0.98〜2.33、低い確実性)。初版だけを見ていると、この点を取り違えます。
一般的な認識とエビデンスの乖離
マグネシウムの筋痙攣改善効果はサプリメント市場では広く訴求されていますが、本コクランレビューの結論はそれを支持していません。著者らは、高齢者の骨格筋痙攣に対してマグネシウム補給が臨床的に意味のある予防効果をもたらすことは考えにくい、と述べています。
運動に伴う筋痙攣については、2019年9月までの検索でもRCTが見つかっていません。「効果がない」という結論が出ているのではなく、直接調べた試験そのものが存在しないという状態です。
この論文の読み解きは、マグネシウムの成分ページで扱っています。