研究の厚みが成分ごとに異なることを太さの違う3本の線で表した抽象ビジュアル

Nutrition

アダプトゲンの種類と違い、アシュワガンダ・ロディオラ・朝鮮人参を比較する

アダプトゲンとは何か、主要なアシュワガンダ・ロディオラ・朝鮮人参はどう違うのか。研究の厚みの差に加えて、アシュワガンダが日本では専ら医薬品に区分され食品として販売できないことまで、一次情報をもとに整理しました。

「アダプトゲン」という言葉を、サプリの紹介やポッドキャストで見かける機会が増えました。ストレスに強くなる、疲れに効く、と紹介される一方、アシュワガンダ・ロディオラ・朝鮮人参など種類が多く、どれをどう選べばいいのか分かりにくいのも事実です。

結論を先に言えば、選び方の軸は「アダプトゲンかどうか」ではなく「その成分に、自分の目的を支えるだけのヒト臨床データが積まれているか」です。

経営者にとっての関心は流行語ではなく、自分のコンディションのどこに、どれが、どの程度の根拠で作用しうるかにあります。

この記事は、アダプトゲンという概念の整理と、主要な成分の比較、そしてエビデンスの厚みの差を、2000-2025年の査読論文をもとにまとめます。個別成分の詳細はロディオラ・朝鮮人参の各ページに譲り、ここでは横断的な選び方に絞ります。

アダプトゲンとは何か

アダプトゲンは、ストレス応答のバランスを整えるとされる植物群の総称です。アシュワガンダ・ロディオラ・朝鮮人参・エゾウコギ・ホーリーバジル・シサンドラなどが含まれます。もともとは旧ソ連の研究者が提唱した概念で、特定の臓器に効くのではなく、ストレスへの抵抗力を全体的に高めるという考え方に基づいています。

この「抵抗力を高める」という発想が想定しているのは、視床下部・下垂体・副腎をつなぐHPA軸と呼ばれるストレス応答系です。強いストレスが続くとこの系が過剰に働き、コルチゾールの分泌リズムが乱れます。アダプトゲンとされる植物は、この過剰反応を穏やかにする方向に働くと仮説されてきました。

ストレス試験でコルチゾールや主観的なストレス指標の変化を測る研究が多いのは、この仮説を背景にしているためです。

ただし、これはあくまで作用の枠組みであり、成分ごと・試験ごとに検証の度合いは大きく異なります。同じ枠組みで語られていても、実際にヒトで測定されたかどうかは成分ごとに確認する必要があります。

ここで注意したいのは、アダプトゲンが医学的に確立した薬理分類ではない点です。各植物が含む成分も作用も異なり、「アダプトゲンだから効く」という一括りの説明は成り立ちません。実際には、植物ごとに別々の研究が積み重ねられており、その厚みにも差があります。経営者がこの言葉に触れるときは、概念で判断せず、成分単位でエビデンスを見る姿勢が役立ちます。

日本では、アシュワガンダはサプリとして買えない

比較に入る前に、日本国内では前提がひとつ変わります。

厚生労働省は、成分ごとに食品として使えるかどうかを区分しています。「専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)リスト」に載った成分は、食品やサプリメントとして販売できません。アシュワガンダは、このリストに「ウィザニア・ソムニフェラ(Withania somnifera)/全草」として記載されています1。

一方、ロディオラ(イワベンケイ)、朝鮮人参(オタネニンジン)、エゾウコギは、別添2の「医薬品的効能効果を標ぼうしない限り医薬品と判断しない成分本質(原材料)リスト」に置かれています2。

これは「安全性が承認された」という意味ではありません。効能効果をうたわない限り医薬品とは判断しない、という区分です。うたえば医薬品とみなされます。

同じ「アダプトゲン」でくくられていても、国内で手に取れるかどうかがまず違います。

アダプトゲンを研究の厚みと日本での区分の2軸で並べた図。アシュワガンダは研究が最も厚いが専ら医薬品で販売不可、ロディオラと朝鮮人参は研究が中程度で、別添2(効能効果をうたわない限り医薬品と判断しない区分)。
図1 研究の厚みと、日本で買えるかは別

海外の記事や動画でアシュワガンダが一般的なサプリとして紹介されるのは、その国の制度が違うためです。日本の読者にとっては、研究の中身より先に、この区分を知っておくほうが実務的です。

この記事でアシュワガンダの研究に触れるのは、何がどこまで調べられているかを知ることに意味があるからで、入手や摂取を勧めるためではありません。

主要アダプトゲンの比較

研究されてきた文脈と、想定される使いどころを整理します。

成分研究が多い領域エビデンスの厚み日本での区分
アシュワガンダストレス・不安・睡眠厚い(2024-25にも複数RCT)別添1(専ら医薬品)。食品・サプリとして販売不可1
ロディオラ疲労・抑うつ気分中(小規模・やや古い)別添2(医薬品と判断しない側)
朝鮮人参慢性疲労中(レビューはあるが質に幅)別添2(医薬品と判断しない側)
エゾウコギ等持久・免疫薄い(ヒト試験が少ない)別添2(医薬品と判断しない側)

研究の厚みと、国内で手に取れるかどうかは一致しません。最も研究が積まれている成分が、日本では食品として売れない、という並びになっています。

アシュワガンダは、慢性的にストレスを抱える成人を対象としたランダム化比較試験で、ストレス指標や主観的な負担感の変化が報告されています3。認知機能の指標を扱った試験もあり、急性および反復摂取での変化が報告されています4。

2025年にも、ストレスや不安の症状に関するRCTが複数報告されており56、研究の更新が続いている点が他のアダプトゲンとの違いです。古くは2012年の不安・ストレスを対象としたRCTが、この領域の出発点としてよく参照されます7。

同じ成分でも、規格化された抽出物を使い、被験者数と観察期間を確保した試験が積み上がっているかどうかで、参照する価値は変わります。アシュワガンダはこの点で相対的に条件が揃った試験が多い成分です。

ロディオラは、軽度から中等度の抑うつ気分や、ストレス下の疲労を対象とした研究があります。SHR-5という抽出物を用いた試験では、抑うつ症状や試験期間中の学生の疲労に関する変化が報告されました89。

ただし、いずれも比較的小規模で、報告された年代も古いものが中心です。

用途として「一過性の疲労」に文脈が近いのは、これらの試験が短期のストレス負荷下での変化を見ているためです。

朝鮮人参については、慢性疲労を対象としたランダム化比較試験のシステマティックレビューがあり、疲労への有用性が議論されていますが、研究の質にばらつきがあると整理されています10。

レビューがあることと、根拠が揃っていることは別です。 組み入れられた個々の試験の質が揃っていない点は、結果を控えめに読む理由になります。

エビデンスの厚みは成分で違う

ここが、アダプトゲンを選ぶうえで最も実務的なポイントです。「アダプトゲン」とひとまとめにされがちですが、ヒト臨床試験の蓄積量は成分ごとに大きく異なります。アシュワガンダはストレス・睡眠領域で近年もRCTが積み上がっている一方、ロディオラや朝鮮人参は小規模あるいは古い研究が中心で、エゾウコギやシサンドラに至ってはヒトでの質の高い試験が限られます。

アシュワガンダ・ロディオラ・朝鮮人参以外にも、エゾウコギ・ホーリーバジル・シサンドラなどがアダプトゲンとして挙げられます。ただしこれらは、動物実験や試験管レベルの報告は見られても、ヒトを対象にした質の高いランダム化比較試験が限られます。

比較記事や複合サプリの成分表では主要3成分と横並びに並ぶことが多いものの、参照できるヒトデータの厚みは同列ではありません。

名前が並んでいることと、根拠が揃っていることは別です。 そう理解しておくと、成分表に惑わされずに済みます。

したがって、複数のアダプトゲンをまとめて語る記事や複合製品の説明は、根拠の所在が追えません。文献は成分ごとに、単一成分の試験として読むほうが判断しやすくなります。複合では何が作用しているのかを切り分けられず、相互作用の評価も難しくなります。

加えて、複数成分が少量ずつ配合された製品では、各成分が試験で用いられた用量に届いていないこともあります。経営者のように時間が限られる場合ほど、検証しやすい単純な選択のほうが扱いやすいはずです。

製剤や用量で結果は変わる

エビデンスの厚みと並んで見落とされやすいのが、同じ成分でも製剤で中身が違うという点です。

臨床試験は、規格化された特定の抽出物を使っていることがほとんどです。アシュワガンダなら根から抽出したKSM-66や、葉と根を含むSensorilといった規格があり、有効成分とされるウィタノライドの含有率も規格ごとに定められています。

つまり「アシュワガンダの研究でこうだった」という話は、その抽出物・その含有率・その用量についての話です。成分名が同じであることは、中身が同じであることを意味しません。

用量も試験ごとに幅があります。研究を読むときは、抽出物の規格と1日量まで確認しないと、その結果が何についての話なのかが定まりません。

ハーブ系の原料は産地や品質のばらつきが大きく、表示と実際の含有量が食い違う例も指摘されてきました。研究の数字を、名前が同じというだけで一般化しないほうが安全です。

長期連用の安全性データも、多くの成分で限定的です。短期試験で大きな問題が報告されていないことは、年単位の使用を保証しません。

どの成分が、どの文脈で研究されてきたか

どの成分が、どういう文脈で研究されてきたかを整理します。効果を保証するものではなく、国内で入手できるかどうかとも別の話です。

  • ストレス感・睡眠 — アシュワガンダの研究が最も多い領域です。ただし国内では食品として販売できません1
  • 出張・繁忙期の一過性の疲労感 — ロディオラが扱われてきた文脈に近い領域です
  • 慢性的な疲労感 — 朝鮮人参のレビューが参照できますが、研究の質に幅があります
  • 睡眠・運動・食事の土台は、成分の話とは別に、先に整える領域です

何かを足す前に、ストレスとコルチゾール管理のような生活側の調整を先に置くほうが、変化の有無も見極めやすくなります。記録がないまま複数を同時に始めると、何が要因かを切り分けられません。

服薬中・持病がある場合の注意

アダプトゲンには、期待値を下げて読むべき点があります。最も実務的に重要なのは相互作用です。アダプトゲンの一部は、甲状腺・血糖・免疫・鎮静系の薬剤と相互作用する可能性が指摘されています。

降圧剤・血糖降下薬・抗凝固薬・免疫抑制剤・甲状腺関連薬などを服用している方、妊娠中・授乳中の方は、自己判断での摂取を避け、医師・薬剤師に相談してください。とくに複数の薬を併用している場合、想定しにくい組み合わせが生じることがあります。

概念そのものにも限界があります。「アダプトゲン」は医学的に厳密な分類ではなく、含まれる植物の作用も一様ではありません。この記事は医療上の助言ではなく、研究で扱われてきた内容と選び方の整理です。体調に不安がある場合や、明らかな不調が続く場合は、サプリの検討より先に医療機関の受診を優先してください。

アダプトゲンは、流行語として一括りにすると見誤ります。成分ごとに、研究の厚みと国内での区分は別々に確認する。 そのうえで、生活の土台を整えることが先にきます。関連して、慢性疲労・ストレスの各ページも判断の材料になります。


参考文献

Footnotes

  1. 厚生労働省. 専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)リスト(別添1・植物由来物等). 2026年8月5日更新. https://www.mhlw.go.jp/content/001734637.pdf ↩ ↩2 ↩3

  2. 厚生労働省. 医薬品的効能効果を標ぼうしない限り医薬品と判断しない成分本質(原材料)リスト(別添2). https://www.mhlw.go.jp/content/001734639.pdf ↩

  3. Pandit S, Srivastav AK, Sur TK, et al. (2024). Effects of Withania somnifera Extract in Chronically Stressed Adults: A Randomized Controlled Trial. Nutrients, 16(9):1293. DOI: 10.3390/nu16091293 [PMID: 38732539] ↩

  4. Leonard M, Dickerson B, Estes L, et al. (2024). Acute and Repeated Ashwagandha Supplementation Improves Markers of Cognitive Function and Mood. Nutrients, 16(12):1813. DOI: 10.3390/nu16121813 [PMID: 38931168] ↩

  5. Mahadevan M, Gopukumar K, et al. (2025). A New Ashwagandha Formulation (Zenroot™) Alleviates Stress and Anxiety Symptoms While Improving Sleep Quality: A Randomized Controlled Trial. Advances in Therapy, 42(10):5238-5254. DOI: 10.1007/s12325-025-03327-z [PMID: 40875185] ↩

  6. Pakhale K, Pakhale R, Srivathsan M (2025). Efficacy and safety of Ashwagandha (Withania somnifera) root extract on stress and weight management in adults. Journal of Medicine and Life, 18(12):1140-1154. DOI: 10.25122/jml-2025-0147 [PMID: 41635453] ↩

  7. Chandrasekhar K, Kapoor J, Anishetty S (2012). A prospective, randomized double-blind, placebo-controlled study of safety and efficacy of a high-concentration full-spectrum extract of Ashwagandha root in reducing stress and anxiety. Indian Journal of Psychological Medicine, 34(3):255-262. DOI: 10.4103/0253-7176.106022 [PMID: 23439798] ↩

  8. Darbinyan V, Aslanyan G, Amroyan E, et al. (2007). Clinical trial of Rhodiola rosea L. extract SHR-5 in the treatment of mild to moderate depression. Nordic Journal of Psychiatry, 61(5):343-348. DOI: 10.1080/08039480701643290 [PMID: 17990195] ↩

  9. Spasov AA, Wikman GK, Mandrikov VB, et al. (2000). A double-blind, placebo-controlled pilot study of the stimulating and adaptogenic effect of Rhodiola rosea SHR-5 extract on the fatigue of students. Phytomedicine, 7(2):85-89. DOI: 10.1016/S0944-7113(00)80078-1 [PMID: 10839209] ↩

  10. Arring NM, Millstine D, Marks LA, Nail LM (2018). Ginseng as a Treatment for Fatigue: A Systematic Review. Journal of Alternative and Complementary Medicine, 24(7):624-633. DOI: 10.1089/acm.2017.0361 [PMID: 29624410] ↩

FAQ

よくある質問

アシュワガンダは日本で買えますか?
食品やサプリメントとしては販売できません。厚生労働省の「専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)リスト」に「ウィザニア・ソムニフェラ/全草」として記載があるためです。海外では一般的なサプリとして流通していますが、日本では制度上の位置づけが異なります。ロディオラや朝鮮人参は別添2に置かれています。これは効能効果をうたわない限り医薬品とは判断しないという区分で、安全性が承認されたという意味ではありません。
アダプトゲンの中で最も研究が進んでいるのはどれですか?
ストレス・不安・睡眠の領域では、アシュワガンダのヒト臨床試験が質・量ともに最も厚く、2024-2025年にも複数のRCTが報告されています。ただしアシュワガンダは日本では専ら医薬品に区分され、食品やサプリメントとして販売できません。ロディオラや朝鮮人参にも研究はありますが、規模が小さい、または古い試験が中心です。同じ「アダプトゲン」でも、エビデンスの蓄積量には大きな差があります。
アシュワガンダとロディオラは何が違いますか?
研究されてきた領域と、日本での扱いが違います。アシュワガンダはストレス・不安・睡眠の研究が最も多い一方、日本では専ら医薬品に区分され、食品やサプリメントとして販売できません。ロディオラは疲労や抑うつ気分の文脈で研究されており、このリストには載っていません。どちらも効果を断定できる段階ではなく、服薬中の方は医師・薬剤師への相談が前提です。