Nutrition

カフェインの効果は何時間続くか、効き始めから抜けるまで

カフェインは飲んでから30〜120分でピークに達し、半減期は4〜6時間。ただし個人差は1.5〜10時間と大きく、効いている感覚が消えても体内には残ります。効果の中身、睡眠への定量的な影響、何時までなら飲めるのかを、査読論文と公的機関のデータから整理します。

コーヒーを飲んでどれくらいで効くのか。その効果は何時間続くのか。そして、何時まで飲んでよいのか。この3つは、順に「30〜120分でピーク」「半減期は平均4〜6時間、ただし個人差は1.5〜10時間」「コーヒー1杯なら就寝の8.8時間前まで」と、査読論文が数字で答えています12

ただ、この数字を並べるだけでは実務では足りません。カフェインが「切れた」と感じた後も体内にはかなりの量が残っていること、上がるのは覚醒であって判断力ではないこと、夜のカフェインは睡眠だけでなく体内時計そのものを後ろへずらすこと。さらに、飲んでいる薬によっては半減期が延びることもあります。この記事は、効き始めから抜けるまでの時間軸を、査読論文・系統的レビュー・公的機関の評価資料に基づいて通しで追いかけます。

なお本文では、コーヒーの量を杯数ではなくミリグラムで扱います。日本のコーヒー(浸出液)はおよそ60mg/100mLで、マグカップ1杯(200mL)がおよそ120mgです3。「1杯」の中身は器の大きさで倍近く変わるため、時間の管理をするなら量はmgで数えるほうが確実です。

効き始めるまでと、抜けるまでの時間

国際スポーツ栄養学会のポジションスタンドによれば、カフェインを口から摂ったとき、血中濃度がピークに達するまでの時間は30分から120分の幅で報告されています1。「飲んで30分で効く」という一般的な説明は下限を採ったもので、実際には2時間近くかかる人もいます。

そして半減期。血中のカフェインが半分に減るまでの時間は、平均で4〜6時間とされています。ただし同じ資料は、成人での個人差が1.5時間から10時間に及ぶことも明記しています1。この幅は小さくありません。半減期1.5時間の人と10時間の人が同じ午後3時に同じコーヒーを飲んだとして、深夜0時の時点で体内に残っている量は桁が違います。

半減期という言葉には、直感に反する性質があります。半減期5時間の人が200mgのカフェイン(コーヒーおよそ330mL分)を正午に摂ったとすると、体内の量はこう推移します。

時刻経過体内に残るカフェイン量
12:00摂取200 mg
17:005時間後100 mg
22:0010時間後50 mg
03:0015時間後25 mg
08:0020時間後12.5 mg

半減期5時間と仮定し、残量を「摂取量 × 0.5の(経過時間÷半減期)乗」で求めた理論値です。吸収にかかる時間を無視した単純なモデルなので、実際の推移とは多少ずれます。それでも、就寝時刻を23時とすれば、正午のコーヒーが40mgほど残った状態で布団に入る計算になります。「昼のコーヒーはもう抜けている」という感覚は、体感としては正しくても、薬物動態としては正確ではありません。

半減期が10時間側の人であれば、この残量はさらに増えます。表は5時間という平均的な値での目安であって、自分の数字ではない、という点は押さえておいてください。

効いている感覚と、残っている量は別物

ここが最初のつまずきどころです。カフェインの覚醒感は、血中濃度がピークを過ぎれば薄れていきます。けれども濃度そのものは、指数関数的にゆっくり減っていくだけです。感覚のカーブと濃度のカーブは、同じ形をしていません。

夕方に「もう効いていない」と感じるのは、ピークからの落差を体が相対的に感じ取っているからで、絶対量がゼロに近づいたからではない。この乖離が、夜になって「眠れるのに眠りが浅い」という現象を生みます。

実際、欧州食品安全機関(EFSA)の評価をまとめた食品安全委員会のファクトシートは、就寝直前に体重70kgの成人が100mg(コーヒーおよそ170mL)を摂ると睡眠時間の短縮や睡眠潜時の延長といった睡眠障害が起こりうると記しています3。マグカップ1杯にも満たない量です。

上がるのは覚醒であって、判断力ではない

カフェインを飲むと頭が冴える、という表現はよく使われます。ただ、何が冴えるのかを研究は区別しています。

認知・身体・作業パフォーマンスへの影響をまとめた2016年のレビューは、およそ40mgから300mgの用量で、覚醒度、注意の持続、注意、反応時間が改善すると整理しています。一方で、記憶や、判断・意思決定といった高次の実行機能への効果は一貫していないとも述べています4

この区別は、知的労働の現場では決定的です。カフェインは「眠くならずに机に向かっていられる時間」を延ばしますが、「その机で下す判断の質」を上げるとは限らない。むしろ、覚醒だけが維持されると、疲労が判断に効いていることに気づきにくくなります。重要な意思決定の前にコーヒーを足すという習慣は、眠気を隠す手段としては機能しても、判断の精度を担保する手段にはなりません。

カフェインは、脳内でアデノシンという物質の受容体を塞ぐことで眠気を感じにくくします4。アデノシン自体が消えるわけではありません。眠気は借金のように積み上がったまま、請求書の到着だけが先送りされます。この「借入」の性質を理解しておくと、飲むタイミングの意味が変わります。

代謝の速さを左右する遺伝子差についてはカフェイン代謝の遺伝子差で詳しく扱っています。

睡眠に何が起きるかは、分単位でわかっている

「夜のカフェインは睡眠に悪い」で止まっている解説が多いのですが、どれくらい悪いのかは、すでに定量化されています。

24の研究を統合した2023年のシステマティックレビュー・メタアナリシスによれば、カフェイン摂取は次のような変化をもたらしたと報告されています2

睡眠の指標カフェインによる変化
総睡眠時間45分 短縮
睡眠効率7% 低下
入眠までの時間9分 延長
途中で目覚めている時間12分 増加
浅い睡眠(N1)の時間6.1分 増加
深い睡眠(N3・N4)の時間11.4分 減少

総睡眠時間の45分と、深い睡眠の11.4分。この2つが並んでいることに意味があります。眠れなくなるだけでなく、眠れた分の中身も変わる。「寝つけたから問題ない」という自己判断が届かない領域で、変化が起きています。

疫学研究と無作為化比較試験を横断的に調べた2017年のレビューも、カフェインが入眠までの時間を延ばし、総睡眠時間と睡眠効率を下げ、主観的な睡眠の質を悪化させること、徐波睡眠と脳波上の徐波活動が減ることを、用量反応・時刻反応の関係とともに整理しています。同レビューは、高齢者の睡眠が若年者よりカフェインに敏感である可能性にも触れています5

では、何時までなら飲んでいいのか

先ほどのメタ分析は、この問いに具体的な時間で答えています。総睡眠時間の減少を避けるためには、コーヒー(250mLあたり107mg相当)は就寝の少なくとも8.8時間前までに、プレワークアウト系サプリメント1回分(217.5mg)は少なくとも13.2時間前までに摂り終えるべきだ、という結論です2

摂った量ごとに、就寝時刻から逆算するとこうなります。

就寝時刻コーヒー250mL(107mg)の門限プレワークアウト1回分(217.5mg)の門限
22:0013:128:48
23:0014:129:48
24:0015:1210:48
25:0016:1211:48

右の列は、あくまで217.5mgという特定の量についての推定値です。「200mgを超えたら一律13.2時間前」という基準が示されたわけではありません。ただ、量が増えるほど門限が前倒しになるという方向は明確で、エナジードリンクやプレワークアウトのように1回で200mg前後を摂る飲み方をするなら、午前中で切り上げる計算になる、ということです。

左の列を見ると、世間でよく言われる「15時以降は避ける」は、23時就寝の人にとってはやや遅すぎることがわかります。

もう1本、よく引かれる実験があります。400mgのカフェインを、就寝直前・3時間前・6時間前にそれぞれ摂って睡眠を測った2013年の研究では、どのタイミングでもプラセボと比べて有意な睡眠の乱れが生じました6。ここを読み違えないでください。この研究が示したのは「6時間空ければ大丈夫」ではなく、その逆です。6時間前に摂っても睡眠は乱れた。著者らは総睡眠時間の減少幅から、就寝6時間前のカフェインにも無視できない睡眠妨害作用があると結論づけています。

つまり「6時間ルール」は安全圏の線ではなく、最低限これ以上は空けたい下限にすぎません。400mgのような多めの量を飲むなら、8.8時間や13.2時間という側の数字で考えるほうが妥当です。

そしてもう一つ。8.8時間という数字は、24の研究を統合した集団の平均から導かれた推定です。あなた個人の門限を保証するものではありません。半減期が10時間側に寄っている人、睡眠に問題を抱えている人、高齢の人、CYP1A2の代謝が遅い人、後述するADORA2Aの感受性が高い人では、この線でも遅すぎることがあります。8.8時間は出発点として使い、それでも寝つきや夜間の目覚めが改善しないなら、さらに1〜2時間前倒しして試してください。

夜のカフェインは、体内時計そのものをずらす

睡眠を削るだけではありません。カフェインには、体内時計の針を後ろへ動かす作用があります。

2015年に発表された二重盲検・プラセボ対照の試験では、習慣的な就寝時刻の3時間前にダブルエスプレッソ相当のカフェインを摂ったところ、メラトニン分泌リズムの位相が約40分後退しました。この後退幅は、就寝時刻から3時間にわたって明るい光(約3000ルクス)を浴びたときに生じる後退の、およそ半分に相当します7

夜のコーヒーは、その晩の睡眠を浅くするだけでなく、翌日以降の「眠くなる時刻」を後ろへずらす。夜型化が進んで朝が起きられないという悩みの背景に、夕方のカフェインが効いていることは十分にありえます。同じ試験は、培養したヒト細胞でもカフェインが概日リズムの周期を延ばすことを示しており、この作用がアデノシン受容体を介したものであることを支持しています。

体内時計側からの整え方はクロノタイプ別の業務設計、朝の光の使い方は朝のプロトコルで扱っています。

同じ一杯でも、効き方が人によって違う理由

半減期が1.5時間から10時間まで散らばる理由の一つは、カフェインを分解する肝臓の酵素CYP1A2の働きに個人差があるためです。この酵素の遺伝子型によって、代謝の速い人と遅い人に分かれることが知られています8

ただ、代謝の速さだけでは説明のつかない現象があります。「代謝は速いはずなのに、少し飲んだだけで眠れなくなる」人がいる。ここに関わるのが、カフェインが結合する側、つまりアデノシンA2A受容体の遺伝子(ADORA2A)です。

2007年の研究は、自分で「カフェインに敏感」と申告した人とそうでない人でADORA2Aの遺伝子型の分布が異なること、そしてこの遺伝子型が、カフェイン摂取後の睡眠中の脳波の変化の出方を左右することを示しました9。同じ量を飲んでも、受け手の受容体側の性質によって、睡眠への響き方が変わるということです。

代謝の速さ(どれだけ早く分解できるか)と、感受性(同じ濃度でどれだけ強く反応するか)は別の軸です。この2つが組み合わさるため、「自分にとっての門限」は他人の門限とは一致しません。数字はあくまで出発点で、最終的には自分のデータで補正する必要があります。

薬とカフェインは、同じ酵素を取り合う

競合記事がほとんど触れていない、しかし「効果時間」を左右する最大の要因がこれです。

CYP1A2という酵素は、カフェインだけを分解しているわけではありません。臨床的に重要ないくつもの薬の代謝にも関わっています。そのため、CYP1A2の働きを妨げる薬を飲んでいると、カフェインの分解が滞り、体内での滞留時間が延びます。

2000年の総説は、この相互作用を臨床的に重要なものとして整理しています。とくにフルボキサミン(選択的セロトニン再取り込み阻害薬の一つ)をはじめ、一部の抗不整脈薬(メキシレチン)などがCYP1A2の阻害に関わると述べられています。同総説は、カフェインの代謝が飽和すると体内蓄積が非線形になりうること、そのため薬との相互作用によってカフェインへの耐性が破られる場合があることにも言及しています10

日常の感覚としては、「いつもと同じ量を飲んでいるのに、ある時期から急に眠れなくなった」という形で現れます。服薬が始まった時期と重なっていないか。この視点を持っている人は多くありません。服用中の薬とカフェインの関係については、自己判断せず、処方した医師や薬剤師に確認してください。

喫煙は逆にCYP1A2を誘導するため、禁煙するとカフェインの分解が遅くなります。禁煙後に「コーヒーが効きすぎる」「眠れない」と感じるのは、この変化が背景にありえます。

朝の頭痛は、カフェインが切れた合図か

もうひとつ、競合が扱っていない時間軸があります。飲まなかったときに何が起こるか、です。

カフェインの離脱について57の実験研究と9の調査研究を精査した2004年の総説は、次のように整理しています11。妥当と判断された症状は、頭痛、疲労感、活力の低下、覚醒度の低下、眠気、気分の落ち込み、集中困難、いらだち、頭がすっきりしない感じなど。実験研究における頭痛の発生率は50%でした。症状は摂取をやめてから12〜24時間後に始まり、20〜51時間後にピークを迎え、2〜9日間続きます。そして重要なのは、1日100mg程度という決して多くない摂取量からでも離脱症状が生じうる、という点です。

週末の朝に頭痛がする。休暇の初日は体がだるい。こうした経験は、平日の習慣的なカフェイン摂取が途切れたことの反応かもしれません。逆に言えば、朝一杯のコーヒーで「復活する」感覚の一部は、前夜からの離脱状態が解除されただけ、という可能性があります。カフェインが底上げしているのは、素の状態のパフォーマンスではなく、離脱によって下がったベースラインなのかもしれない、という見方です。

減らす場合は、いきなり断つより、1〜2週間かけて段階的に量を落とすほうが、症状は出にくくなります。

毎日飲むと効かなくなるのか

同じ量で同じように効き続けるわけではありません。カフェインの薬理作用の多くには耐性が形成されることが知られています10。飲み慣れた人ほど、朝の一杯で得られる覚醒の上乗せは小さくなっていきます。

ただ、耐性は一様ではありません。覚醒作用への耐性は比較的つきやすい一方、睡眠への妨害作用や、心拍・血圧への影響が同じ速度で薄れるとは限りません。「もう慣れたから夜に飲んでも眠れる」という自己申告と、実際の睡眠脳波が食い違う理由の一つがここにあります。眠りに落ちる感覚には慣れても、深い睡眠の削られ方まで慣れるわけではないからです。

耐性についてもう一つ注意すべきなのは、先ほどの薬との相互作用です。CYP1A2の働きが薬によって妨げられると、同じ量を飲んでいても体内濃度が上がり、獲得したはずの耐性が追いつかなくなることがあります10。「いつもと同じ量なのに動悸がする」という変化は、量ではなく代謝側の条件が変わったサインかもしれません。

睡眠不足が続いている状況では、カフェインの反復摂取が身体的・認知的な能力の維持に有効だと報告されています4。ただしこれは、睡眠を削った状態を一時的に支える使い方であって、削られた睡眠が回復するわけではありません。

摂りすぎのサインと、エナジードリンクの扱い

量が過ぎたときに出るのは、動悸、手の震え、落ち着かなさ、不安感、胃の不快感、そして眠れなさです。カフェインの毒性作用は、薬理作用の延長線上にあると整理されています。重い場合には、けいれんやせん妄、心拍数の上昇から不整脈に至るまでの症状が報告されています10

実務上、最も管理しにくいのはエナジードリンクです。製品によってカフェイン濃度も内容量も大きく異なり、100mLあたり32mgのものから300mgのものまで幅があります3。「1本」という単位で管理していると、実際の摂取量が数倍ずれます。缶の本数ではなく、表示されているmg数で数える習慣に切り替えるだけで、過剰摂取の多くは避けられます。

食品安全委員会は、短時間に過剰なエナジードリンクを摂取することの健康リスクについて、各国機関が注意喚起している状況を紹介しています。また、体重50kgの青少年では1日あたり約15mgでは有害な影響がみられない一方、50mgを超えると耐性が増加する可能性があるとも記されています3

年齢と体の状態で、基準線は動く

同じ400mgという上限も、対象によって変わります。

妊婦については、EFSAの評価に基づき1日200mg以下であれば胎児に健康リスクは生じないとされています3。子ども(3〜10歳)とティーンエージャーについては、1日あたり3mg/kg体重が目安として示されています。体重30kgの子どもなら90mgで、コーヒー150mL(マグカップ1杯に満たない量)で上限に届く計算です。

高齢者では、睡眠がカフェインに対してより敏感になる可能性が指摘されています5。同じ習慣を何十年も続けていて、加齢とともに眠りが浅くなったと感じている場合、加齢そのものだけでなく、カフェインへの反応の変化が重なっている可能性があります。

就寝直前の摂取に関しては、体重70kgの成人で100mg、体重1kgあたりおよそ1.4mgという水準から睡眠障害が生じうるとされ、この影響は子どもやティーンエージャーでも同様に観察されています3。体重が軽いほど、同じ一杯の重みは増します。

1日にどれだけなら安全か

量の基準は、公的機関が示しています。食品安全委員会がまとめたEFSA(欧州食品安全機関)の評価によれば、健康な成人では1回あたり200mg(体重70kgの成人でおよそ3mg/kg)までであれば急性毒性の懸念は生じず、習慣的な摂取は妊婦を除く健康な成人で1日400mg以下であれば健康リスクへの懸念は生じないとされています。妊婦については1日200mg以下、授乳中の女性は1回200mg以下かつ1日200mgまでとされています3

日本の食品に含まれるカフェイン量も、同じ資料に載っています。

飲料カフェイン量
コーヒー(浸出液)60 mg / 100 mL
インスタントコーヒー57 mg / 100 mL
玉露160 mg / 100 mL
紅茶30 mg / 100 mL
せん茶20 mg / 100 mL
ウーロン茶20 mg / 100 mL
エナジードリンク32〜300 mg / 100 mL(製品差が大きい)

マグカップ1杯のコーヒー(約200mL)でおよそ120mg。1日400mgは、コーヒーにして3杯強という計算になります。エナジードリンクは製品による差が大きく、100mLあたり300mgに達するものもあるため、本数ではなく表示のmg数で管理する必要があります。

なお、これらは健康リスクの観点からの上限であって、睡眠を守る観点の基準ではありません。400mg以内に収まっていても、飲む時刻が遅ければ睡眠は削られます。量と時刻は別の管理項目です。

知的労働の1日に、どう置くか

ここまでの数字を、実際の1日に落とします。運動選手向けの摂取設計(運動の60分前に3〜6mg/kg)はよく整理されていますが1、会議と締切で構成された1日に向けた設計は、ほとんど語られていません。

起床直後については、慌てて飲まないという選択肢があります。目覚めた直後は覚醒を促すコルチゾールが自然に立ち上がる時間帯で、この波の上にカフェインを重ねる必然性は高くありません。朝食と合わせて、あるいは仕事に取りかかる直前に1杯目を置くほうが、効きどころとしては素直です。

午前の重要な会議に合わせるなら、ピークまで30〜120分かかることを踏まえて、開始の1時間ほど前に飲みます。ただし前の節で見たとおり、カフェインが上げるのは覚醒であって判断そのものではありません4。判断の質を要求される場面では、カフェインを足すより前に、前夜の睡眠を確保するほうが直接的です。

午後の眠気に対しては、時刻の制約が効いてきます。23時就寝なら、コーヒー1杯の門限は14時台です2。それ以降に眠気が来たときは、カフェインを足すのではなく、短い仮眠、席を立って歩く、光の量を増やす、といった手段に切り替えるほうが、その晩の睡眠を守れます。仮眠とカフェインの組み合わせについては昼寝のプロトコルで、食事と血糖の側からの午後の眠気対策は午後の眠気と食事のタイミングで扱っています。

夕方以降に集中を保つ必要があるとき、カフェインを追加するのは、翌朝からの借入で今日を買う行為になります。締切前の一晩であれば合理的な取引でしょう。ただしそれが常態化すると、離脱と睡眠不足が積み重なり、素のパフォーマンスが下がったところをカフェインで埋め戻すだけの循環に入ります。

L-テアニンとの併用や、緊張感を抑える組み合わせについてはL-テアニンのプロトコルを参照してください。夜の睡眠を整える側の設計は寝つきを改善するプロトコル睡眠の質を上げる設計にまとめています。

最初の1週間で試すこと

自分の半減期は測れません。けれども、自分の反応は観察できます。

やること
1飲んだ時刻と量(mg)を記録する。杯数でなくmgで
2就寝時刻から8.8時間を引き、自分の門限を算出する
3門限を1日守り、寝つきと夜間の目覚めを記録する
4午後の眠気に対し、カフェインでなく歩行か短い仮眠を試す
51杯目を起床直後から1時間ずらしてみる
6服用中の薬があれば、CYP1A2との関係を薬剤師に確認する
71週間で最も眠れなかった日の、前日の摂取時刻を特定する

7日目に見るのは、量の合計ではなく「最後の一杯の時刻」です。総量が同じでも、最後の一杯が何時だったかで、その晩の睡眠は変わります。カフェインの管理は、実のところ時刻の管理です。

体内に残る量は計算できても、その残量が自分の睡眠にどれだけ響くかは、遺伝子型と感受性で変わります。数字は出発点として使い、最終的な門限は、自分の記録で1〜2時間ずつ前後させながら決めるのが現実的でしょう。

なお、動悸、強い不安、手の震え、不整脈といった症状がある場合や、妊娠中・授乳中の方、心疾患などで治療を受けている方は、カフェインの摂取量について自己判断せず、医療機関にご相談ください。


参考文献

Footnotes

  1. Guest NS, VanDusseldorp TA, Nelson MT, et al. (2021). International society of sports nutrition position stand: caffeine and exercise performance. Journal of the International Society of Sports Nutrition, 18(1):1. DOI: 10.1186/s12970-020-00383-4 [PMID: 33388079] 2 3 4

  2. Gardiner C, Weakley J, Burke LM, et al. (2023). The effect of caffeine on subsequent sleep: A systematic review and meta-analysis. Sleep Medicine Reviews, 69:101764. DOI: 10.1016/j.smrv.2023.101764 [PMID: 36870101] 2 3 4

  3. 食品安全委員会(2018). ファクトシート「カフェインを含む食品」(最終更新 2018年2月23日). https://www.fsc.go.jp/factsheets/index.data/factsheets_caffeine.pdf 2 3 4 5 6 7

  4. McLellan TM, Caldwell JA, Lieberman HR (2016). A review of caffeine’s effects on cognitive, physical and occupational performance. Neuroscience and Biobehavioral Reviews, 71:294-312. DOI: 10.1016/j.neubiorev.2016.09.001 [PMID: 27612937] 2 3 4

  5. Clark I, Landolt HP (2017). Coffee, caffeine, and sleep: A systematic review of epidemiological studies and randomized controlled trials. Sleep Medicine Reviews, 31:70-78. DOI: 10.1016/j.smrv.2016.01.006 [PMID: 26899133] 2

  6. Drake C, Roehrs T, Shambroom J, Roth T (2013). Caffeine effects on sleep taken 0, 3, or 6 hours before going to bed. Journal of Clinical Sleep Medicine, 9(11):1195-1200. DOI: 10.5664/jcsm.3170 [PMID: 24235903]

  7. Burke TM, Markwald RR, McHill AW, et al. (2015). Effects of caffeine on the human circadian clock in vivo and in vitro. Science Translational Medicine, 7(305):305ra146. DOI: 10.1126/scitranslmed.aac5125 [PMID: 26378246]

  8. Guest N, Corey P, Vescovi J, El-Sohemy A (2018). Caffeine, CYP1A2 Genotype, and Endurance Performance in Athletes. Medicine and Science in Sports and Exercise, 50(8):1570-1578. DOI: 10.1249/MSS.0000000000001596 [PMID: 29509641]

  9. Rétey JV, Adam M, Khatami R, et al. (2007). A genetic variation in the adenosine A2A receptor gene (ADORA2A) contributes to individual sensitivity to caffeine effects on sleep. Clinical Pharmacology and Therapeutics, 81(5):692-698. DOI: 10.1038/sj.clpt.6100102 [PMID: 17329997]

  10. Carrillo JA, Benitez J (2000). Clinically significant pharmacokinetic interactions between dietary caffeine and medications. Clinical Pharmacokinetics, 39(2):127-153. DOI: 10.2165/00003088-200039020-00004 [PMID: 10976659] 2 3 4

  11. Juliano LM, Griffiths RR (2004). A critical review of caffeine withdrawal: empirical validation of symptoms and signs, incidence, severity, and associated features. Psychopharmacology, 176(1):1-29. DOI: 10.1007/s00213-004-2000-x [PMID: 15448977]

FAQ

よくある質問

カフェインの効果は何分後から出て、何時間続きますか?
経口摂取後、血中濃度がピークに達するまでの時間は30〜120分と報告されています。半減期は平均4〜6時間ですが、成人では1.5〜10時間と個人差が大きく、同じ一杯でも人によって体内に残る時間が数倍違います。
コーヒーは何時までなら飲んでいいですか?
24研究のメタ分析では、総睡眠時間の減少を避けるには、コーヒー250mL(107mg相当)は就寝の8.8時間前まで、プレワークアウト系サプリメント1回分(217.5mg)は13.2時間前までに済ませるべきと報告されています。23時就寝なら、コーヒーは14時台までが目安です。ただしこれは集団の平均から導かれた推定で、代謝の遅い人や睡眠が敏感な人にはさらに前倒しが必要です。
夕方に飲んでも眠れるので大丈夫ですか?
眠れることと、睡眠が保たれていることは別です。同じメタ分析では、カフェイン摂取により総睡眠時間が45分短縮し、深い睡眠が11.4分減ったと報告されています。眠りに落ちられても、構造は変わりえます。
朝に頭痛がするのはカフェインのせいですか?
可能性はあります。カフェインを常用している人が摂取をやめると、12〜24時間後に頭痛などが現れ、20〜51時間後にピークを迎え、2〜9日続くと報告されています。1日100mg程度の摂取でも起こりえます。