同じ長さの帯を、短く何度も区切った並びと、少ない回数で区切った並びの2列に描いた抽象ビジュアル。優劣は表していない

Sleep

二度寝の研究は、結果が割れている

二度寝の効果を対照条件と比べた査読実験は2本あり、どちらも最終起床時刻を揃えたうえでその手前に覚醒を挟む設計でした。報告されている結果は同じ方向を向いていません。ただし回数も間隔も対象も測り方も違うため、何が違いを生んだのかは分かっていません。何がどこまで測られたのかから整理します。

アラームが鳴る。止める。もう5分だけ、と思って目を閉じる。気がつくと20分経っていて、起きたときのほうが最初より頭が重い。

二度寝について調べると、たいてい「良くない」と書かれています。体内時計が乱れる、睡眠慣性が強くなる、自律神経が崩れる、と。

一方で、日本には「二度寝を使って睡眠慣性を抑える」ことを目的にした公的研究費の研究があります。同じ現象を、片方は避けるべきものとして、もう片方は使える手段として扱っています。

実験の中身を読むと、この食い違いは思っていたところとは別の場所にありました。

先に、結論だけ

  • 対照を置いた査読実験2本はどちらも、最終起床時刻を揃えたうえで、その手前に覚醒を挟む設計。日常の「寝過ごす二度寝」とは違う
  • 条件は研究ごとに違う。前倒しの長さも、鳴らし方も、対象も測り方も違い、単純に並べられない
  • 小川らの条件(20分のあいだに5分ごとに4回)では、起床直後のぼんやりが長引いた
  • Sundelinらの条件(30分前の初回アラーム後にスヌーズ3回)では、認知テストの成績は落ちず、深い睡眠から起こされることを避けられていた。減ったのは最終30分のあいだの睡眠で、一晩の総睡眠時間に差はなかった
  • 1回にする方法を調べた研究が日本にある。起床の20分前、睡眠が足りないときは30分前。ただし規模は8〜28人
  • その2本は、それぞれ自分の中で「手前にも鳴らす」と「起床時刻に一度だけ」を比べただけ。異なるスヌーズ設定どうしを直接比べた試験は、確認した範囲では見当たらない
  • 起床直後のぼんやりは、韓国の成人2,355人の自己申告で平均15.8分(標準偏差12.9分)

記録の半分以上でスヌーズが押される

まず、どのくらい行われているのかを見ておきます。

Robbinsらが2025年に Scientific Reports で報告した研究は、睡眠記録アプリ「SleepCycle」の利用者21,222人から、2022年7月から12月にかけて記録された300万を超える睡眠セッションを分析しました1。対象は、アプリをアラームとして使い、しかも自動調整型ではなく従来型のスヌーズ機能を選んでいた利用者です。

測ったもの値
スヌーズで終わった睡眠セッション55.6%
スヌーズで終わったセッション1回あたりの操作回数平均2.4回(95%CI 2.4〜2.5)
同じくスヌーズを使っていた時間平均10.8分(95%CI 10.7〜10.9)

記録されたセッションの半分以上で、スヌーズが使われていました。

ここで断っておくと、これは一般の人口を代表する数字ではありません。睡眠記録アプリを使い、iPhoneを使い、従来型のスヌーズを選び、データの研究利用に同意し、月の半分以上を記録していた人たちが対象です。どういう人が選ばれたかという条件は分かりますが、その人たちの睡眠への関心そのものは測られていません。

そのうえで、いくつかの傾向が出ています。女性のほうが男性より多く使っていました。9時間を超える長い睡眠のほうが、7〜9時間や7時間未満より、スヌーズで終わる割合が高くなっていました。就寝が普段より遅かった日は、使用が増えていました。

論文自身は、日中のパフォーマンスへの影響については「今後の研究が必要」と書いています。実態を測った研究であって、良し悪しを判定した研究ではありません。

この数字から言えないこと

このデータから分かるのは、スヌーズが押されたかどうか、何回押したか、どれくらいの時間使ったか、といったところまでです。起きられなかったのか、意図して起床を後ろにずらしたのかは、ログからは区別できません。

報告されているのは、9時間を超えるセッションのほうが7〜9時間や7時間未満よりスヌーズで終わりやすかった、という関連までです。なぜそうなるのかは測られていません。

対照を置いた実験は2本ある

ここからが本題です。

二度寝の効果を対照条件と比べた査読実験は、この記事で確認した範囲では2本です。読むと共通している点があります。どちらの実験も、最終的に起きる時刻を対照条件と揃えています。

比較する以上、起床時刻がずれてしまうと何を測ったのか分からなくなります。だから実験では、起きる時刻を固定したうえで、その手前にアラームを置きます。

対照を置いた2本の実験は起床時刻を揃えてその手前に覚醒を挟むのに対し、日常の二度寝は起床時刻そのものが後ろにずれることを対比した図。
図2 実験の二度寝と、日常の二度寝は違う

日常の二度寝は、そうなっていないことがあります。アラームを止めて、また眠って、結果として起きる時刻そのものが後ろにずれる。

この2つは別のことです。 以下で紹介する結果は、起きる時刻を動かさなかった場合の話だと思って読んでください。

20分前から4回鳴らした実験

日本語の記事が挙げる「睡眠慣性が強くなる」という説明には、対応する実験があります。

小川ら(広島大学)が2022年に Journal of Physiological Anthropology で報告した研究です2。2つの調査から成り立っています。

調査1は、日本の大学生293人への質問紙です。85.7%が朝起きるために何らかの道具を使っていました。起床の道具を使わない人を除いた289人のうち204人、つまり70.5%が携帯電話のスヌーズ機能をよく使っていました。理由の上位は「一度だけのアラームでは起きられない心配」(50.7%)と「寝る前に起きられる安心感がほしい」(35.6%)でした。

この調査では設定の実態も聞いています。アラームを設定するのは起床予定時刻の平均20.3分前、間隔は平均7.0分(最頻値と中央値は5分)でした。そしてスヌーズボタンを押す回数は1朝あたり平均6.2回です。これは自己申告で、しかも押した回数なので、実験条件の「アラームが4回作動」とは数え方が違います。

調査2は、別の学生10人(21〜26歳・男女5人ずつ)を対象にした睡眠実験室での比較です。習慣的にスヌーズを週5〜7回使っている人を選んでいます。

実験条件は、調査1の実態にもとづいて決められました。論文の記述は次のとおりです。起床予定時刻の手前20分のあいだに、5分間隔で4回アラームが鳴る。起床時刻と就寝時刻は、両条件で固定されています。

結果はこうです。眠りの質と量には、最後の20分を除いて差がありませんでした。その最後の20分では、スヌーズが覚醒とステージN1(浅いまどろみの段階)を延ばしていました。そして、スヌーズを使わない条件のほうが、起床後の活力の指標が就寝前より高くなっていました。

論文の結論は、スヌーズを使うと単一のアラームに比べて睡眠慣性が長引く、その理由はおそらく繰り返し強制的に起こされるからだ、というものです。

参加者は10人です。論文自身が事後の検出力分析を載せており、検出力は0.47と報告されています。小さな実験である点は、読むときに外せません。

30分前からスヌーズした実験

2024年に、回数と間隔を変えた実験の結果が出ました。

Sundelinらが Journal of Sleep Research で報告した研究です3。こちらも2つの調査で構成されています。

調査1は1,732人への質問紙です。スヌーズを使う人は広く存在し、若い人と、夜型の傾向が強い人ほど多いことが確認されました。朝のぼんやりが強い人、睡眠が短い人にも多く見られました。

調査2は、習慣的にスヌーズを使っている31人を対象に、睡眠ポリグラフを取りながら、同じ人の中で条件を比べたものです。

条件はこう書かれています。スヌーズ条件では、参加者は自分の携帯電話のアラームを、起きなければならない時刻の30分前にセットし、最終的な起床までに3回スヌーズするよう指示されました。9〜10分ごとに押す形です。スヌーズなし条件では、起きる時刻ちょうどにセットします。

査読論文になっている2つの実験の設計を同じ時間軸に並べた図。どちらも最終起床時刻を対照条件と揃えたうえで、その手前に覚醒を挟んでいる。小川らは起床の20分前から5分ごとにアラームが4回作動する条件、Sundelinらは起床の30分前に初回アラームを鳴らしたうえで9〜10分ごとにスヌーズ操作を3回行う条件。
図1 どちらも起床時刻の手前に置かれている

結果を並べます。

測ったもの30分のスヌーズを使った場合
起床直後の認知テスト改善したか、影響がなかった
最終30分のあいだの睡眠中央値で約6分少ない(29分→23分・p<0.001)
一晩の総睡眠時間明確な差なし(416.6分 vs 418.0分・p=0.805)
深い睡眠(N3)からの覚醒防げていた
コルチゾール覚醒反応主解析でははっきりせず。探索的な解析では起床時にスヌーズ側が高い(+1.8 nmol/dl・p=0.024)。起床40分後は差なし
朝の眠気・気分・一晩の睡眠構築明確な差なし(ただしベイズ因子は結論保留を示す項目もある)

著者らの結論は、短い二度寝の時間は睡眠を大きく乱すことなく睡眠慣性を和らげる助けになりうる、それは夜型の人や朝のぼんやりが強い人にとって、というものです。ただしこの実験は習慣的にスヌーズを使う人だけを対象にしており、属性ごとに効果の大きさを比べた解析ではありません。夜型や朝のぼんやりとの結びつきは、調査1のほうで見られた傾向です。

ただし著者ら自身が、この証拠の強さはベイズファクターで見ると項目によってばらつくと断っています。「効果が確認された」と読むより、「悪化は見られなかった」と読むほうが実態に近いところがあります。

コルチゾールについては、主たる解析でスヌーズと起床後の時間の交互作用がはっきりせず、探索的な解析で起床時にスヌーズ条件のほうが高い値が出ています。著者らは、この点は追加のデータが要るという書き方をしています。コルチゾール覚醒反応そのものについてはコルチゾール覚醒反応で扱っています。

1回にする方法が調べられた

ここで、日本の研究に戻ります。

小川らの論文の共著者に、広島大学の林光緒がいます。そして林は、2022年度から2024年度にかけて、科学研究費助成事業で「二度寝を用いた睡眠慣性抑制法の開発」という課題に取り組みました4。同じ研究者が、避ける対象としてではなく使う手段として二度寝を調べていることになります。

課題の目的は、快適に目覚めるための新しい起床方法として、睡眠慣性に対する二度寝の効果を検証することです。

公開されている研究成果報告書には、3年分の実験の設計と結果が書かれています。順に見ます。

1年目は、睡眠を制限しない条件での20分。 睡眠に問題のない若年成人12名(女性6・男性6・平均20.2±1.0歳)が対象です。3夜連続で防音室に泊まり、睡眠ポリグラフを記録しました。起床予定時刻の20分前に一度起こして再入眠させる条件と、起床予定時刻にだけアラームを鳴らす条件を比べています。結果は、二度寝条件のほうが起床時の目覚めが良く、起床後の全般的活力が高く、聴覚課題の反応時間も有意に短い(ps < .05)というものでした。

2年目は、睡眠を6時間に制限したうえで長さを比べています。 若年成人8名(女性4・男性4・平均21.8±0.6歳)が、0分・20分・30分の3条件すべてに参加しました。

ここが重要です。0分条件と20分条件のあいだには、起床時の目覚めにもパフォーマンスにも有意な差が出ませんでした。 1年目と違う結果です。報告書は、睡眠不足による睡眠慣性の悪化と二度寝の効果が相殺された可能性を挙げています。ただし1年目と2年目は参加者も日程も別なので、睡眠を制限したことだけが違いの理由だとは言えません。

一方、30分条件は0分条件より全般的活力が有意に高く(p = .03)、反応時間も有意に速いという結果でした(p = .005)。

3年目は自宅でのフィールド実験です。 大学生28名が2週間の睡眠日誌をつけ、1週間は起床予定時刻に起き、もう1週間は予定時刻の前に一度起きて再入眠しました。20分前の群と30分前の群が14名ずつです。

起床時刻のばらつきで参加者を分けたところ、規則的な人(起床時刻の標準偏差が1時間以内)では30分前が起床後の眠気軽減に有効な傾向(p = 0.09)、不規則な人では20分前が疲労感の軽減に有効な傾向(p = 0.05)でした。報告書はどちらも「傾向」と書いています。 28名をさらに4群に分けたうえでの探索的な結果です。

この報告をどう扱うか

設計と結果は公開されていますが、この3つの実験に対応する査読論文は確認できませんでした。課題の成果一覧に載っている査読つきの論文は3件で、短時間の仮眠に関する研究、トラック事故のマイクロスリープを分析した研究、そしてここで引いた小川らのスヌーズ研究です。成果一覧には二度寝に関する学会発表が2件ありますが、報告書の3つの実験のどれに対応するかは、一覧からは特定できませんでした。

規模も小さいところです。12名、8名、28名。フィールド実験は28名を4群(20分前・30分前 × 規則・不規則)に分けており、報告書自身が結果を「傾向」と表現しています。

したがって、「20分前に一度起きればよい」と手順として読むには早いところがあります。条件によって結果が変わる、という形までが読み取れる範囲です。

研究どうしは、比べられない

3つを並べ直します。

研究査読起床前の設定対象睡眠報告された結果
小川ら 2022(日本)あり20分のあいだにアラームが5分ごとに4回作動学生10人通常睡眠慣性が長引いた
Sundelinら 2024(スウェーデン)あり30分前に初回アラーム、9〜10分ごとにスヌーズ操作3回習慣的使用者31人通常認知テストは改善か不変
林・1年目(日本)確認できず20分前に一度覚醒させて再入眠若年成人12人通常目覚め・活力・反応時間が改善
林・2年目(日本)確認できず20分前に一度覚醒させて再入眠若年成人8人6時間に制限差なし
林・2年目(日本)確認できず30分前に一度覚醒させて再入眠同上6時間に制限活力・反応時間が改善
林・3年目(日本・自宅)確認できず20分前または30分前に一度覚醒大学生28人を4群に分割日常探索的な「傾向」(p=0.09/0.05)

小川らとSundelinらの実験では、どちらも最終的な起床時刻を対照条件と揃えています。 違うのはその手前の置き方です。なお、起床時刻に音刺激で起こしたと明記しているのは小川らのほうで、Sundelinらの論文にその記述はありません。林の報告書にも、二度寝条件の最終時刻の扱いは書かれていません。 そして、小川らの「4回」はアラームが作動した回数、Sundelinらの「3回」は参加者がスヌーズを押した回数で、 数え方の単位が違います。 4対3対1として並べられる数字ではありません。

並べると、手前の覚醒が少ないほうが良い結果になっているように見えます。ただし、この並びから方向性を読み取ることはできません。

理由は3つあります。

ひとつ、対照を置いた2本は、それぞれ自分の研究の中で「手前にも鳴らす条件」と「起床時刻に一度だけの条件」を比べただけです。4回と3回を比べた研究ではありませんし、そもそも上に書いたとおり数え方の単位が違います。5分間隔で4回と、9〜10分間隔で3回のように、異なるスヌーズ設定どうしを同じ対象・同じ測り方で直接比べた試験は、この記事で確認した範囲では見当たりませんでした。

ふたつ、同じ「20分前に1回」でも、報告されている結果が変わっています。 林の1年目は改善、2年目は差なしでした。夜間睡眠を6時間に制限したかどうかが目立つ違いですが、参加者も日程も別の実験です。回数や長さだけを見ても足りません。

みっつ、そのほかの条件も揃っていません。前倒しの長さも国も年齢も、対象者の選び方も、評価に使った指標も違います。規模は8人から31人です。

さらに、小川らの研究では、スヌーズを使わない条件でも深い睡眠(N3)から起きた参加者はいませんでした。「N3からの覚醒を避けられたから良かった」という説明を、そのまま2つの研究の差に当てはめることはできません。

回数と間隔は違いの候補のひとつです。ただしそれが理由だと確かめられてはいません。

朝のぼんやりは自己申告で約16分

朝のやわらかな光がカーテン越しに差す寝室。めくれた掛け布団と枕があり、ベッド脇の木の台に目覚まし時計が少しだけ写っている。
イメージ 目が覚めてから、頭がはっきりするまで

そもそも、起床直後のぼんやり(睡眠慣性)はどのくらい続くものなのか。

Kimらが2026年に PLOS One で報告した研究は、韓国の成人2,355人(49.2%が男性、19〜92歳)のデータを分析しました5。「夜の睡眠から起きた後、朝のぼんやりが取れるまでにふつうどのくらいかかりますか」という、単一の質問による自己申告です。

平均は15.8分(標準偏差12.9分)でした。

関連が見られた要因を並べます。

長くなる方向短くなる方向
不安の質問票の得点が高い(14.3分長い・効果量 d=1.12)睡眠時間が長い
不眠朝型のクロノタイプ
日中の強い眠気習慣的ないびき
夜型のクロノタイプ—
女性(男性より1.1分長い)—

最も効果量が大きかったのは不安でした。ただしここで測られているのは、朝の不安ではなく、GAD-7という質問票で評価した一般的な不安症状です。そして横断的な調査なので、どちらが原因かは分かりません。

著者ら自身が、この単一項目の質問は集団調査には適しているものの、睡眠慣性の多面的な性質を十分に捉えきれない可能性がある、と書いています。

クロノタイプで説明しきれるわけでもない

夜型の人ほど二度寝が多い、という傾向は複数の研究で出ています。ではそれは平日と休日の睡眠時刻のずれ(社会的時差ぼけ)で説明できるのか。

Hsiaoらが2025年に Scientific Reports で報告した研究は、231人を対象にこれを調べました6。夜型の傾向が強い人ほど社会的時差ぼけが大きいことは確認されましたが、社会的時差ぼけと睡眠慣性の合計得点のあいだには有意な相関がありませんでした。

ただし、性別を統制すると、睡眠慣性の質問票の下位尺度のひとつ(睡眠慣性への行動的な反応)については、社会的時差ぼけが部分的に媒介する関係が見られています。

「夜型だから休日にずれて、だから朝がつらい」という一本道の説明は支持されていませんが、まったく無関係というわけでもない、という位置づけです。

平日と休日のずれそのものについては早起きのコツで扱っています。

「気持ちいい」の説明は、まだ薄い

二度寝について調べる人の多くが知りたいのは、良し悪しの前に「なぜあんなに気持ちいいのか」だと思います。

この点を扱っている記事はあります。よく挙がるのは3つです。起床に向けて上がっていたコルチゾールが下がるときの快感。レム睡眠が優位になって脱力感が強いこと。体温と姿勢がちょうどよい状態にあること。

ただ、これらの説明に論文が添えられている例を、上位の記事の中には見つけられませんでした。参考文献として学会名や公的機関の名前が並んでいても、どの研究の何を指しているかまでは書かれていません。

「気持ちいい」の機序は、実験で直接測られたものとしては手薄な領域です。

近いところにあるのはSundelinらの報告の、深い睡眠(N3)から起こされることを防いでいた、という部分です。深い睡眠の途中で起こされたときに睡眠慣性が強く出るとされているので、そこを避けられているなら目覚めたときのつらさは小さくなります。

ただしこれは「気持ちよさ」ではなく「つらくなさ」の説明です。快感そのものを測ったわけではありません。気持ちいい理由を科学的に説明した、と書けるだけの材料はまだありません。

睡眠段階だけで決まるわけでもない

前提として補足しておきます。

起床直後に頭がぼんやりし、判断が鈍る状態が睡眠慣性です。深い睡眠の途中で起こされたときに強く出る、という説明が広く使われています。

ただしSundelinらは、起きたときの睡眠段階と睡眠慣性の関係について、近年の研究は一義的でなく複数の要因が関わると書いています。睡眠が足りているか、体内時計のどの位置にいるか、個人差もあります。睡眠段階は候補のひとつです。

昼寝を短く切ることが勧められる場面もありますが、その理由を深い睡眠の回避だけで説明できるかは、この記事で引いた研究からは決められません。昼寝そのものは昼寝の効果にまとめました。

自分の朝にどう当てはめるか

朝の光が差す窓辺。ベッドにかかったブランケットの横で、木のサイドテーブルにスマートフォンとマグカップが置かれている。
イメージ 起きる前後の時間の使い方

実務の形にまとめます。

よく聞く話確かさ扱い
二度寝は睡眠慣性を強める5分間隔で4回鳴らした10人の実験で観察この条件・この人数で観察された結果として受け取る
二度寝は体内時計を乱すこの記事で扱った研究は、いずれも体内時計の位相を測っていない起床時刻が後ろにずれることと、体内時計が動くことを同一視しない
スヌーズを3回押しても成績は落ちない31人・同一人物内での比較。証拠の強さは項目でばらつく悪化しなかった、と読む
1回にすれば睡眠慣性が減る科研費の報告書に設計と結果あり。12人・8人・28人と小規模で、査読論文は確認できず条件で結果が変わる、というところまで受け取る
朝のぼんやりは平均16分韓国の成人2,355人の自己申告・単一項目個人差が大きい。平均を当てはめない
二度寝は意志の問題アプリのログが測ったのは操作の有無・回数・時間意図も起床困難も、このデータからは分からない

そのうえで、自分の朝を見るときの手がかりを3つ挙げます。

回数を数える。 小川らの質問紙調査では、スヌーズボタンを押す回数は1朝あたり平均6.2回でした(自己申告)。自分が何回止めているかは記録がなくても思い出せます。ただし何回を超えると悪くなるという線は、研究からは引けません。 実験が置いた条件と自分の朝がどれくらい違うか、を見る手がかりです。

起床時刻を動かしているかを見る。 対照を置いた2本の実験は、起きる時刻を揃えています。二度寝の分だけ実際に遅く起きているなら、それは実験が調べたものとは別のことです。

眠りの外側の要因も見る。 韓国の調査で効果量が最も大きかったのは不安の質問票の得点でした。小川らの調査でも、スヌーズを使う理由の上位は「起きられない心配」と「安心感がほしい」でした。原因の向きは分かりませんが、眠りだけの問題として扱うと見落とすものがあります。

眠りそのものが足りていない場合は睡眠負債の解消、夜中に目が覚める場合は夜中に目が覚めるに分けて扱っています。

自覚と実際の状態がずれることについては脳疲労はどこまで測られているかでも触れています。

ここで言い切れないこと

二度寝を「してよい・いけない」で判定できる証拠はありません。この記事で並べたのは、条件も対象も違う別々の実験の結果です。

実験室の研究はいずれも小規模です。小川らは10人で、論文自身が検出力0.47と報告しています。Sundelinらは31人で、認知課題の解析に使われた人数は課題によって30人前後でした。どちらも大学生や習慣的な使用者という限られた集団を対象にしています。

林の科研費研究については、公開されている研究成果報告書の記述をもとにしています。設計と結果は書かれていますが、この3つの実験に対応する査読論文は確認できませんでした。規模も12人・8人・28人と小さく、フィールド実験は下位群に分けた探索的な結果として「傾向」と報告されています(p = 0.09 と p = 0.05)。20分・30分という数字も、その範囲で受け取る必要があります。

Robbinsらのデータは規模が大きい一方で、睡眠記録アプリの利用者という特定の集団です。一般の人口の割合として読めるものではありません。

Kimらの調査は単一項目の自己申告です。関連が見られたことと、原因であることも別の話です。

そして、朝起きられない状態が長く続く、日中に強い眠気がある、気分の落ち込みを伴う、といった場合は、この記事の範囲外にあります。背景に別の要因があることがあり、その切り分けは医療機関の領域です。

まとめ

  • 対照を置いた査読実験2本は、どちらも最終起床時刻を揃えたうえで、その手前に覚醒を挟む設計だった
  • 日常の二度寝は起きる時刻そのものが後ろにずれることがある。それは実験が調べたものとは別のこと
  • 小川らは20分のあいだに5分ごとに4回のアラーム、Sundelinらは30分前の初回アラーム後にスヌーズ操作3回、林は1回の覚醒。数え方の単位が違う
  • 小川らの条件では起床直後のぼんやりが長引き、Sundelinらの条件では認知テストの成績は落ちず、一晩の総睡眠時間にも差はなかった
  • 1回にする方法を調べた科研費研究は、設計と結果を報告書で公開している。ただし規模は8〜28人で、対応する査読論文は確認できない
  • 同じ「20分前に1回」でも、睡眠を6時間に制限した実験では差が出なかった
  • その2本は自分の中で「手前にも鳴らす」と「起床時刻に一度だけ」を比べただけ。異なるスヌーズ設定どうしを直接比べた試験は、確認した範囲では見当たらない
  • 起床直後のぼんやりは、韓国の成人2,355人の自己申告で平均15.8分。関連が最も大きかったのは不安の質問票の得点だった

参考文献

Footnotes

  1. Robbins R, Sääf D, Weaver MD, et al. Snooze alarm use in a global population of smartphone users. Scientific Reports, 15:16942. 2025. https://doi.org/10.1038/s41598-025-99563-y ↩

  2. Ogawa K, Kaizuma-Ueyama E, Hayashi M. Effects of using a snooze alarm on sleep inertia after morning awakening. Journal of Physiological Anthropology, 41:43. 2022. https://doi.org/10.1186/s40101-022-00317-w ↩

  3. Sundelin T, Landry S, Axelsson J. Is snoozing losing? Why intermittent morning alarms are used and how they affect sleep, cognition, cortisol, and mood. Journal of Sleep Research, 33(3):e14054. 2024. https://doi.org/10.1111/jsr.14054 ↩

  4. 林光緒(広島大学). 二度寝を用いた睡眠慣性抑制法の開発(研究成果報告書). 日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 課題番号 22K03211、研究期間 2022〜2024年度. 2025年5月20日現在. https://kaken.nii.ac.jp/ja/file/KAKENHI-PROJECT-22K03211/22K03211seika.pdf ↩

  5. Kim JR, Park HJ, Paik SM, et al. Morning sleep inertia and its associated factors: Findings from a nationwide study. PLOS One, 21(1):e0337992. 2026. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0337992 ↩

  6. Hsiao FC, Wang YC, Reiter E, Wu CW. The linkage between chronotype, social jetlag, and responses to sleep inertia. Scientific Reports, 15:12858. 2025. https://doi.org/10.1038/s41598-025-93057-7 ↩

FAQ

よくある質問

二度寝は結局してもいいのですか?
「してよい・いけない」を決められるだけの証拠は揃っていません。分かっているのは、条件によって報告されている結果が違うことです。起床の20分前にアラームを5分ごとに4回作動させた実験では、起床直後のぼんやりが長引きました。起床の30分前に初回アラームを鳴らし、そこから9〜10分ごとにスヌーズを3回押した実験では、認知テストの成績は落ちませんでした。ただし対象も国も評価方法も違い、回数の数え方も揃っていないため、鳴らし方だけが理由だと確かめられたわけではありません。
二度寝は何分までなら大丈夫ですか?
この記事で確認した範囲では、上限を決めた研究は見当たりませんでした。実験で使われた設定なら、起床時刻の20分前から、あるいは30分前からです。ただし対照を置いた2本の実験は、どちらも起きる時刻を揃えた設計です。アラームを止めてそのまま寝過ごし、実際の起床時刻が後ろにずれる場合は、これらの実験が調べたものとは別のことが起きています。
朝のぼんやりはどのくらい続きますか?
韓国の成人2,355人を対象にした調査では、自己申告による平均が15.8分(標準偏差12.9分)でした。同じ調査では、不安の質問票で高い人はそうでない人より14.3分長く、夜型の人ほど長い傾向が報告されています。横断的な調査なので原因の向きは分かりません。個人差も大きく、平均値をそのまま自分に当てはめられる数字ではありません。