目覚ましを何度も止めて、結局いつもの時間に起きる。休日は昼まで寝てしまい、月曜の朝がいちばんつらい。
早起きの方法を調べると、たいてい「意志」「習慣化」「モチベーション」の話になります。実際、コツを並べた記事は多くあります。
ただ、朝起きられるかどうかを決めているのは、気持ちの強さではありません。体内時計が、いま何時を指しているかです。
この記事では、時計そのものを動かした研究を軸に、何をいつ動かせばよいのかを整理します。
起きられないことには、体質の側面がある
まず前提を確認します。朝型か夜型かという傾向(クロノタイプ)には、生まれつきの差があります。
イギリスの大規模コホートに参加した128,266人を対象に、自己申告のクロノタイプについて全ゲノム関連解析が行われました。その結果、朝型であることと統計的に関連する16の遺伝子領域が見つかっています1。
見つかった領域には、体内時計に関わることが知られている遺伝子の近傍も含まれます。別の89,283人のデータとあわせた解析では、16のうち13が引き続き有意で、11は独立したデータ単独でも同じ方向を示しました1。
つまり、同じ時刻に寝て同じ時刻に起きようとしても、眠くなる時刻と起きやすい時刻には個人差があります。朝が苦手なことを、まず性格の問題から切り離してよい根拠があります。
ただし、素因があることと変えられないことは別
ここで話を止めると「体質だから諦める」になってしまいます。実際には、そうではありません。
次に見る研究は、夜型の人たちの体内時計を実際に動かしています。
夜型の時計を2時間前倒しした試験
夜型の傾向を持つ人を対象に、睡眠と覚醒の時刻を早める方向へ動かせるかを調べた無作為化比較試験があります2。参加者22人(介入群12人・対照群10人)で、介入期間は3週間という小規模な試験です。
介入は薬を使わず、実生活のなかで実行できるものに限られました。
- 起床時刻と就寝時刻を早めることで、光を浴びる時刻を動かす
- 食事の時刻を固定する
- カフェインの摂取を調整する
- 運動の時刻を決める
結果として、参加者の睡眠と覚醒の時刻は約2時間前倒しになりました。これは活動量計だけでなく、体内時計の位相を示す指標(暗環境でのメラトニン分泌開始時刻と、起床時のコルチゾール上昇のピーク時刻)でも確認されています2。
そして重要な点が2つあります。
睡眠時間そのものは減っていません。 早く起きるようになった分、早く眠るようになったということです。
もうひとつは、位相の前倒しに伴って、自己申告の抑うつとストレスが有意に改善したことです。あわせて、夜型の人にとって不得意な時間帯である朝の反応時間と握力も向上しました2。
根性で早く起きたのではなく、時計が動いた結果として早く起きられるようになった、という構図です。
光は、浴びる時刻で効果の向きが変わる
4つの要素のうち、体内時計への影響がもっとも大きいのが光です。ただし「明るい光を浴びればよい」という単純な話ではありません。
ヒトの体内時計が光にどう反応するかは、位相反応曲線と呼ばれる形で調べられています。約8,000ルクスの明るい白色光を1時間浴びる条件で、18通りの異なる時刻に振り分けた研究があります3。
分かったのは、同じ光でも、浴びる時刻によって時計が前に進むか後ろにずれるかが変わるということです。
おおまかには次の関係になります。
| 浴びる時刻 | 体内時計への作用 |
|---|---|
| 夕方から深夜(眠くなる時刻の前後) | 後ろにずれる(夜更かしの方向) |
| 明け方から午前中 | 前に進む(早寝早起きの方向) |
| 日中 | 向きは体内時刻による |
ひとつ補足があります。この研究は、光が効かない時間帯は観察されなかったと報告しています3。「昼間の光は関係ない」という単純化はできません。日中でも、その人の体内時刻がどこにあるかによって作用の向きが決まります。
早起きしたいなら、朝の光を増やすことと、夜の光を減らすことは、同じ目的の表と裏になります。片方だけでは打ち消し合います。
夜の光の扱いは夜のブルーライトと睡眠で個別に扱っています。
なぜ、光がいちばん強いのか
体内時計の中枢は、脳の視交叉上核と呼ばれる部位にあります。ここは目から入る光の情報を直接受け取る位置にあり、外界の明暗を手がかりに時刻を合わせています。
夜になるとメラトニンが分泌され、体は睡眠に向かう準備を始めます。この分泌は光によって抑えられます。夜に明るい光を浴びると分泌の立ち上がりが遅れ、眠くなる時刻が後ろにずれます。
逆に、朝の光は時計を前に進める方向に働きます。先ほどの試験で体内時計の位相を測る指標として使われたのが、この「暗い環境でメラトニンの分泌が始まる時刻」でした2。
食事や運動も時刻の手がかりになりますが、光ほど直接的ではありません。動かす順序としては、光を最優先に置きます。
屋外の明るさは、室内とは桁が違う
研究で使われた8,000ルクスという明るさは、一般的な室内照明では届きません。室内は目には明るく感じても、屋外とは桁が違います。
曇りの日でも、屋外は室内よりはるかに明るい環境です。朝の光を浴びるなら、窓際より外に出るほうが確保しやすくなります。
朝に外を歩くことの効果は朝散歩の効果で扱っています。
何を、いつ動かすか
試験で動かされた4つを、実行の順に並べ直します。
1. 起床時刻を固定する(まずここから)
就寝時刻ではなく、起床時刻を先に決めます。眠くなる時刻は自分では選べませんが、起きる時刻は目覚ましで決められるからです。
先に早く寝ようとしても、体内時計が動いていなければ眠くなりません。床の中で眠れない時間が増えるだけです。
2. 起きたらすぐ光を浴びる
起床後、できるだけ早く明るい光を浴びます。屋外のほうが明るさを確保しやすくなります。カーテンを開けるだけでも、何もしないよりは違います。
ここが1と組みになります。起床時刻を早めても、暗い部屋で過ごしていては時計は動きません。
3. 朝食と運動の時刻を決める
食事と運動の時刻も、体内時計に情報を与えます。試験では、この2つを固定することが介入に含まれていました2。
内容より、毎日同じ時刻に行うことが要点です。
運動は朝と夕方のどちらがよいか
試験では運動の時刻を決めることが介入に含まれていましたが、朝でなければならないという設計ではありません2。要点は、毎日ばらつかせないことです。
実務としては、朝に運動できるなら光と組み合わせられるので効率的です。屋外で体を動かせば、光と運動を同時に満たせます。
夕方に運動する場合、就寝直前は避けます。深部体温が上がった直後は寝つきにくくなるためです。強度が高いほど余裕をとり、寝つきが悪い自覚があるなら早めに切り上げます。
4. カフェインを遅い時間に持ち込まない
カフェインは眠くなるまでの時間を後ろにずらします。早く眠くなりたいなら、午後の遅い時間以降は避けます。
半減期と時間帯の考え方はカフェインの効果と時間で扱っています。
目覚ましとスヌーズをどう扱うか
早起きの記事では、スヌーズ機能を使わないことがよく勧められます。
理屈としては、スヌーズで浅く眠り直すと、その細切れの睡眠が起床後のぼんやりを長引かせる、という説明がされます。実際、鳴るたびに止めて二度寝を繰り返す10分ずつの時間は、まとまった睡眠にはなりません。
ただし、スヌーズをやめれば早起きできるわけではありません。目覚ましは起床時刻を強制する道具であって、眠くなる時刻を動かす道具ではないからです。
体内時計が2時間遅れたままなら、アラームを止めた後の体は「まだ夜中」の状態です。つらさの原因はスヌーズではなく、位相のずれのほうにあります。
目覚ましについて実務的に言えることは、次の程度です。
- 起床時刻を一定に保つために使う(起床時刻の固定は、時計を動かす前提になります)
- 止めた後にすぐ光を浴びられるよう、カーテンや照明の準備をしておく
- 手の届かない場所に置くかどうかは、続けやすさの問題であって時計とは関係しない
起きた直後がつらいのは、別の現象
目が覚めた直後に頭がぼんやりし、判断が鈍る状態は睡眠慣性と呼ばれます。これは眠りが足りないこととも、体内時計のずれとも別の現象で、深い睡眠から起こされたときに強く出ます。
数十分で自然に抜けるため、この時間帯に重要な判断を置かない、という対処になります。起きてすぐ光を浴びる、体を動かすといった方法が抜けを早める手段として挙げられますが、効果の大きさははっきりしていません。
睡眠慣性の扱いは昼寝の効果でも触れています。
睡眠時間を削って早起きしない
早起きの記事でよく抜け落ちるのがここです。
先ほどの試験では、睡眠時間は減っていません2。時刻が前倒しになっただけで、眠っている長さは保たれています。
早起きのために就寝時刻をそのままにして起床だけ早めれば、それは単なる睡眠不足です。日中の眠気が増え、作業能率が落ち、結局続きません。
早く起きることと、早く眠くなることは、セットで動かす必要があります。 そして先に動くのは光です。
睡眠不足が積み重なったときの扱いは睡眠負債は返せるのかで扱っています。
早起きすると何が良くなるのか
早起きそのものが健康や成果をもたらす、という言い方には注意が要ります。
先ほどの試験で改善が確認されたのは、抑うつとストレスの自己評価、そして朝の時間帯の反応時間と握力でした2。ここで重要なのは、対象が社会の時間割と体内時計がずれていた人たちだったことです。
つまり確かめられたのは「早く起きると誰でも調子が上がる」ではなく、「ずれを縮めると、ずれによる不調が減る」という関係です。
もともと生活と体内時計が合っている人が、さらに1時間早く起きて得をするという話ではありません。
早起きは目的ではなく、ずれを縮める手段として意味を持ちます。
週末の寝坊が、月曜を壊す
平日に前倒しした時計は、週末に簡単に戻ります。
休日に遅くまで寝ると、朝の光を浴びる時刻が遅れ、夜に光を浴びる時間が延びます。図1で見たとおり、これは時計を後ろへずらす方向の組み合わせです。
月曜の朝がとくにつらいのは、意志の問題ではなく、この2日で時計が後退しているからです。
完全に揃える必要はありませんが、休日の起床時刻は平日との差を1時間以内にとどめるのが目安になります。足りない分は、起床時刻を遅らせるのではなく短い昼寝で補うほうが、時計を崩しにくくなります。
昼寝の長さの目安は昼寝の効果で扱っています。
一晩で2時間動かそうとしない
試験では3週間かけて位相が前倒しになりました。一晩で急に動くものではありません。
実務としては、就寝・起床の時刻を15分から30分ずつ動かし、その時刻で眠れて起きられるようになってから次へ進みます。
うまくいかないときは、動かす幅が大きすぎるか、光・食事・運動・カフェインのどれかが揃っていない場合がほとんどです。1つだけ変えて効かないのは、想定の範囲と考えてください。
実際に動かすときの順序
ここまでを、実行できる形に並べます。
| 順 | やること | 目的 |
|---|---|---|
| 1 | 起床時刻を決めて固定する | 動かす基準を作る |
| 2 | 起きて30分以内に屋外の光を浴びる | 時計を前に進める |
| 3 | 朝食と運動の時刻をそろえる | 手がかりを増やす |
| 4 | 午後の遅い時間のカフェインをやめる | 眠くなる時刻を戻す |
| 5 | 夜の照明とスマートフォンを控える | 後ろへの力を減らす |
| 6 | 慣れたら15〜30分さらに前へ | 段階的に進める |
1から5をそろえた状態を1〜2週間続け、その時刻で眠れて起きられるようになってから6に進みます。
どれくらいで動くか
試験では一定の期間をかけて約2時間の前倒しが達成されました2。数日で完了するものではありません。
目安として、1週間に15〜30分ずつと考えると、2時間動かすのに1〜2か月かかる計算になります。急ぐほど失敗しやすく、失敗すると元の時刻に戻ります。
うまく進まないときは、動かす幅を半分にします。
勤務時間が不規則な場合
シフト勤務や夜勤があると、ここまでの手順はそのままでは使えません。起床時刻を固定できないためです。
この場合、時計を一方向に動かすより、動かす回数を減らすほうが現実的になります。勤務のパターンが決まっているなら、休みの日も勤務日に近い時刻で過ごすほうが、毎回ずらし直すより負担が小さくなります。
早番と遅番が混在する働き方では、体内時計は常にどこかとずれます。そのうえで削られやすいのは睡眠時間なので、まず眠る長さを確保することが優先されます。
勤務が不規則な状態で不調が続く場合、生活の工夫だけで解決しない領域に入ります。産業医や医療機関に相談する対象です。
やっていることは、時差ぼけの調整と同じ
ここまでの手順に見覚えがあるかもしれません。海外へ移動したときに現地時刻へ合わせる方法と、構造が同じだからです。
時差ぼけでは、到着地の朝に光を浴び、食事の時刻を現地に合わせ、カフェインと運動のタイミングを調整します。動かしているのは同じ体内時計です。
違うのは、時差ぼけが「外の時刻が急に変わる」のに対し、早起きは「自分の時計が社会の時刻からずれている」という点です。前者は数日で解消しますが、後者は放っておくと毎週繰り返されます。
時差ぼけの調整手順は時差ぼけの治し方で扱っています。考え方の部分は、そのまま早起きにも使えます。
続かないときに、たいてい起きていること
早起きを試してうまくいかない場合、原因は次のどれかに集まります。
動かす幅が大きすぎる。 いきなり2時間早く起きようとすると、その夜は同じ時刻まで眠くならず、睡眠不足のまま翌朝を迎えます。2日で元に戻ります。
光が抜けている。 起床時刻だけ早めて、暗い部屋でスマートフォンを見ている状態では、時計に「朝が来た」という情報が届きません。もっとも効く要素が使われていないことになります。
夜の光を放置している。 朝の光を浴びていても、夜に強い光を浴び続けていれば打ち消し合います。方向が逆の力を同時にかけている状態です。
週末に戻している。 平日5日で前に動かし、週末2日で後ろに戻す。これを繰り返すと、平均すると動きません。
眠れない原因が別にある。 寝つけない、途中で目が覚めるという問題があるなら、時刻をずらす以前にそちらが先です。
早起きが向かない場合もある
すべての人が朝型に寄せるべきだ、という話ではありません。
仕事の都合で早い時間に活動する必要がなく、遅い時刻に寝て遅い時刻に起きる生活が安定していて、日中に支障がないなら、無理に動かす理由は薄くなります。
先ほどの試験が対象にしたのは、社会の標準的な時間割と自分の体内時計がずれていて、朝の時間帯に不調を感じている人たちでした2。動かす価値があるのは、このずれが実害になっている場合です。
なお参加者22人の小規模な試験なので、誰にでも同じ幅で当てはまるとは限りません。方向として動かせることが示された、という受け取り方が妥当です。
自分がどちらに寄っているかはクロノタイプの見分け方で扱っています。
眠れない状態が続いているなら別の問題
早起きの工夫を続けても、そもそも寝つけない、夜中に何度も目が覚める、という状態が続く場合は、時計をずらす以前の問題があります。
週3回以上の症状が3か月以上続き、日中の活動に支障が出ているなら、医療機関で相談する領域です。切り分けは夜中に目が覚める原因の整理で扱いました。
まとめ
早起きできるかどうかを決めているのは、意志の強さではなく体内時計の位置です。
クロノタイプには遺伝的な素因があり、朝が苦手なことには体質の側面があります1。ただし変えられないわけではなく、夜型の人の時刻を約2時間前倒しした試験があります2。
そこで動かされたのは、光・食事・カフェイン・運動の4つの時刻でした。根性ではなく、時刻の設計です。
順序としては、起床時刻を固定し、起きてすぐ光を浴び、食事と運動の時刻をそろえ、遅い時間のカフェインをやめる。そして睡眠時間は削らず、週末も起床時刻を大きくずらさない。
うまくいかない日があっても、失敗ではありません。時計は数日単位で平均を取って動くので、1日ずれた程度では戻りません。戻るのは、週末に2日続けて遅く起きたときです。
続けるコツがあるとすれば、動かす幅を欲張らないことと、光を毎朝欠かさないことの2つに尽きます。この2つを守っている限り、時計は少しずつ前に進みます。
早起きして何をするかは朝活の設計で扱っています。
参考文献
Footnotes
-
Jones SE, Tyrrell J, Wood AR, et al. Genome-Wide Association Analyses in 128,266 Individuals Identifies New Morningness and Sleep Duration Loci. PLOS Genetics, 2016;12(8):e1006125. DOI: 10.1371/journal.pgen.1006125 ↩ ↩2 ↩3
-
Facer-Childs ER, Middleton B, Skene DJ, Bagshaw AP. Resetting the late timing of ‘night owls’ has a positive impact on mental health and performance. Sleep Medicine, 2019;60:236-247. DOI: 10.1016/j.sleep.2019.05.001 ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7 ↩8 ↩9 ↩10 ↩11
-
St Hilaire MA, Gooley JJ, Khalsa SB, Kronauer RE, Czeisler CA, Lockley SW. Human phase response curve to a 1 h pulse of bright white light. The Journal of Physiology, 2012;590(13):3035-3045. DOI: 10.1113/jphysiol.2012.227892 ↩ ↩2