ミネラル

マグネシウム

Magnesium / Mg

Overall Evidence A SleepNutritionMind 食品成分

Related Concerns

関連する課題

睡眠の質

寝つき・中途覚醒・朝の疲労感

慢性疲労

日中の倦怠感・疲れが抜けない

ストレス

緊張・ストレス反応のコントロール

自律神経

交感・副交感のバランス

姿勢由来の痛み

肩こり・腰痛・首の張り

筋肉の回復

運動後の回復・筋肉の張り

Suggested Benefits

研究で示唆されている作用

  • 睡眠の質のサポート B

    高齢者を対象にした二重盲検RCT(1日500mg・8週間・完了43人)で、睡眠日誌の睡眠時間・睡眠効率・入眠潜時と、質問票の不眠重症度指数に群間差。総睡眠時間には差がない(Abbasi 2012)

  • 筋肉・神経の働きへの関与 C

    骨格筋のけいれんについては、コクランレビュー2020年更新版(11試験735人)で特発性のけいれんにプラセボとの差が示されていない。軽微な有害事象はマグネシウム群で多いという報告がある(RR 1.51、95%CI 0.98〜2.33、低い確実性)。運動に伴うけいれんを評価した無作為化比較試験は見つかっていない

  • ストレス応答への関与 C

    高齢者の不眠を対象にしたRCT(Abbasi 2012)で血清コルチゾールの低下(p=0.008)が報告されている。ストレス応答そのものを主要評価項目にした試験ではない

A は複数の系統的レビュー・メタアナリシス、B は複数のランダム化比較試験、C は観察研究、 D は伝統的知見や予備的な研究を指します。等級を付けていない項目は、根拠となる研究を このページで示せていないものです。

概要

マグネシウムは身体中で300以上の酵素反応に関与する必須ミネラルです。エネルギー産生・筋肉機能・神経伝達・骨形成など、体調維持に幅広く関わります。

現代日本人の摂取量は推奨量を下回る傾向が報告されており、加工食品中心の食生活では不足しやすい成分のひとつです。

研究の内容と限界

睡眠の質のサポート

高齢者の原発性不眠症を対象にした二重盲検の無作為化比較試験があります。60〜75歳の46人(女性23人・男性23人、平均65歳)を2群に分け、1日500 mgの元素マグネシウムかプラセボを8週間続けたもので、最後まで続いたのは43人です。

睡眠日誌からは、睡眠時間(p=0.002)と睡眠効率(p=0.03)が増え、入眠潜時(p=0.02)が下がったと報告されました。別に実施した質問票では不眠重症度指数(p=0.006)が下がっています。血液では血清レニン(p<0.001)とメラトニン(p=0.007)が増え、コルチゾール(p=0.008)が下がりました。

ただし同じ報告のなかで、総睡眠時間には群間差が出ていません(p=0.37)。著者らは、補充群で睡眠効率が0.63から0.73へ上がったことを前提に置いたうえで、一人ひとりの総睡眠時間が変わらなくても、実際に眠れた時間と眠りの充足が同じだけ増え、入眠潜時が同じだけ短くなっていれば、日々の活動による疲労を回復し睡眠を通して身体の力を取り戻すという目的において、総睡眠時間を増やす必要はない、と述べています。

読むときに置いておきたい点が3つあります。睡眠側の指標はすべて本人の申告(睡眠日誌と質問票)であること。解析対象は完了した43人とみられ、サンプルサイズの設計も睡眠指標ではなく血清レニンの差を検出する目的で組まれていること。そして介入群では身体活動量も有意に増えており(p=0.02)、睡眠の改善が活動量の増加を介したものかどうかは、この試験だけでは切り分けられないことです。

骨格筋のけいれん

こちらは方向が違います。11件の無作為化比較試験・計735人を統合したコクランレビュー(2012年版を2020年に更新したもの)は、特発性の筋けいれんについて、マグネシウムとプラセボのあいだに差を示していません。4週時点のけいれん回数の変化率は平均差 −9.59%(95%信頼区間 −23.14〜3.97、3試験177人、中程度の確実性)、ベースラインから25%以上減った人の割合も差がありません(RR 1.04、95%信頼区間 0.84〜1.29、3試験177人、高い確実性)。妊娠に伴う下肢のけいれんは5試験408人ありますが、メタ分析ができていません。しかもこの5試験は、いずれもバイアスリスクが高いと判定されています(特発性の5試験で高いと判定されたのは1試験のみ)。プラセボと比べた3試験のうち、1試験は頻度・強度とも効果なし、1試験は両方に効果あり、1試験は頻度について整合しない結果を報告しています。無治療と比べた1試験も、治療効果全体の3段階評価で有意な差を見いだしていません。

なお11試験のうち1試験は、経口補給ではなく緩徐な静脈内投与を行ったものです。

安全性については、重大な有害事象と有害事象による脱落はプラセボと差がありません。一方で、判定できた4試験254人では軽微な有害事象がマグネシウム群に多く報告されています(RR 1.51、95%信頼区間 0.98〜2.33、低い確実性)。主に下痢などの消化器症状で、経験した人は試験により11%(対照10%)から37%(対照14%)です。

このレビューが明記しているもうひとつの点は、運動に伴うけいれんを評価した無作為化比較試験が見つかっていないことです。運動後のけいれん対策として語られることの多い成分ですが、その用途を直接調べた試験は、2019年9月までの検索では存在していません。

片頭痛

予防目的で経口マグネシウムを用いた10試験・789人を統合した解析で、発作の頻度と強度の低下が報告されています(オッズ比 0.20 と 0.27)。著者らは、一部の試験で無作為化の方法が十分でなかったことを限界として挙げています。

この解析は21試験を統合したメタ分析の一部です。残る11試験948人は、急性発作に対する静脈内投与を調べたもので、サプリメントとして経口摂取する話とは場面が異なります。

ストレス応答への関与

上の不眠症の試験では、血液の指標として血清コルチゾールの低下(p=0.008)と血清レニンの上昇(p<0.001)も報告されています。コルチゾールは視床下部-下垂体-副腎系(HPA軸)の出力にあたる指標です。

ただしこの試験が主要評価項目に置いていたのは不眠であって、ストレス応答そのものではありません。サンプルサイズの設計も血清レニンの差を検出する目的で組まれています。ここから「ストレスに効く」と読むのは、試験が答えている範囲を超えます。

食品からの摂取

推奨摂取量(男性400-420 mg、女性310-320 mg)は、緑黄色野菜・ナッツ・全粒穀物・豆類を意識的に摂ることで概ね達成可能です。ただし加工食品中心の食生活では不足しがちです。

サプリメントの種類

マグネシウム塩の種類によって吸収率と体感が異なります。

  • グリシン酸マグネシウム(マグネシウムグリシネート): 吸収が良く緩下作用が弱い。睡眠サポート目的で使われる
  • クエン酸マグネシウム: 吸収率が高くコストパフォーマンスが良い
  • 酸化マグネシウム: 安価だが吸収率が低め。便秘対策に使われる
  • 塩化マグネシウム: 経皮吸収用(マグネシウムバスソルト等)

Recommended Intake

推奨摂取量

男性400-420 mg/day
女性310-320 mg/day
上限サプリメント由来で1日350 mgを超えない(NIH基準)
出典NIH ODS (Office of Dietary Supplements)

Interactions

相互作用

相手種別内容
ビタミンD 相乗 ビタミンDの活性化にマグネシウムが関与。共に補うと効果的
カルシウム 吸収への影響 同時大量摂取で吸収競合。時間をずらす
ビスホスホネート製剤 注意 吸収を妨げる可能性。服薬から2時間以上空ける
一部抗生物質(テトラサイクリン系・キノロン系) 注意 吸収阻害の可能性。服薬から2時間以上空ける

Referenced By

他成分との相互作用(被参照)

この成分を相互作用の対象として記載している他成分です。

成分種別内容
カルシウム 吸収への影響 同時大量摂取で相互吸収低下
ビタミンD 相乗 ビタミンDの活性化にマグネシウムが必要。共に補うと効果的

Food Sources

主な食品源

  • ほうれん草
  • アーモンド・カシューナッツ
  • 豆類(黒豆・枝豆)
  • 玄米・全粒穀物
  • 海藻(わかめ・昆布)
  • 豆腐

Precautions

注意事項

一般的な注意

  • 過剰摂取で下痢・軟便を起こす可能性
  • 吸収率はマグネシウム塩の種類で異なる
  • 軽度から中等度の腎機能低下がある方は医師に相談してください
  • 抗生物質・ビスホスホネート製剤を服用中の方は、服薬から2時間以上空けて摂取してください
  • サプリメント由来で1日350 mgを超える摂取は推奨されません

禁忌

  • 重度の腎不全
  • 重症筋無力症

Related Research

関連する学術研究

  • Evidence A メタアナリシス 2020
    骨格筋の筋痙攣に対するマグネシウム(コクランレビュー・2020年更新版)

    Cochrane Database of Systematic Reviews / Garrison SR et al.

    2012年版を2020年に更新したコクランレビュー。11件のRCT(並行9件・クロスオーバー2件)計735人を統合し、特発性の筋痙攣ではマグネシウムとプラセボに差が示されなかった。妊娠関連の下肢痙攣は文献が矛盾する。運動に伴う筋痙攣を評価したRCTは見つかっていない。疾患に伴う筋痙攣も、肝硬変の小規模1件を除いて見つかっていない。軽微な有害事象はマグネシウム群で多い。

  • Evidence A メタアナリシス 2016
    片頭痛軽減に対する静注および経口マグネシウムの効果(ランダム化比較試験のメタ分析)

    Pain Physician / Chiu HY et al.

    21件のRCTを統合したメタ分析。うち11件(948人)が急性発作への静注、10件(789人)が予防目的の経口投与を調べている。静注は初回投与後15〜45分・120分・24時間の時点で急性発作を軽減し、経口は発作の頻度と強度を低下させた。

  • Evidence B RCT 2012
    高齢者の原発性不眠症に対するマグネシウム補給効果(二重盲検プラセボ対照試験)

    Journal of Research in Medical Sciences / Abbasi B et al.

    高齢者の原発性不眠症に対し、1日500mgの元素マグネシウムを8週間投与した二重盲検プラセボ対照試験。登録46人のうち43人が完了した。睡眠日誌の睡眠時間・睡眠効率・入眠潜時、質問票の不眠重症度指数、血清レニン・メラトニン・コルチゾール、および身体活動量に群間差が報告された。一方で総睡眠時間には群間差がない(p=0.37)。

Articles Mentioning マグネシウム

マグネシウムを取り上げた記事

References

参考ソース